恋愛境界線
「……課長、ちょっと失礼します」
軽く背伸びをして、片手で課長の前髪を掻き分ける。その下にある額にそっと手のひらを当てると、そこは確かに熱を持っていて。
「もしかしなくても、熱があるじゃないですか!」
道理でスマホを受け取った時に、触れた指先が熱かったわけだ。
「一体、いつから熱があったんですか?まさか今日一日中、ずっと無理をしてたわけじゃないですよね?」
「君はいちいち煩いな。なぜ私にそう構ってくるんだ?」
そんなの、好きだからに決まってるじゃないですか。課長の鈍感め。
心の中で反論し、振り払われた手をギュッと握りしめる。
「熱があろうが、誰にからまれようが、別に君に迷惑がかかるわけじゃないのだから、放っておけば良いだろう」
そんなの、出来るならとっくにそうしてる。だけど、そう出来ないんだから――。
「……ほっとけるわけ、ないじゃないですか」