恋愛境界線

課長のことなんて気にも留めず、一切関わることなく過ごせれば良いのに。


「課長がそれを私に言える立場ですか?自分こそ、あの雨の日に私をほっといてくれれば良かったのに」


そうしたら、私だって課長のことをいちいち意識したり、心配したり、胸が苦しくなったりしなくて済むのに。


「あの日のことが原因で、今こうして熱が出てるんじゃないんですか?私が原因かもしれないのに、ほっとけると思いますか?」


だけど、そうすることが出来ないんだから、自分で自分の気持ちがコントロール出来ないんだから、仕方ないじゃないですか。


「自分は出来なかったくせに、よく人には放っておけとか言えますね!」


ここまで言えば、今度は若宮課長が口を噤む番で。


「今日はもう、このままベッドへ直行してください!」


そう命じてマンションの前で課長と別れた。


体調管理も仕事の内、とか偉そうに言っておきながら、あの人は何をやってるんだろう。


あの日、私のことなんて放っておけばこんなことにならなかったのに、と何度目になるのか判らない悔しさを胸に滲ませる。


人には無理するなとか言って休ませておきながら、自分は熱がある状態で仕事してたとか、ほんっと、意味がわかんない。


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