恋愛境界線
―――――――……
――――――……


「……帰ったんじゃなかったのか?」


ついさっき、マンションの前で別れ、再びすぐに若宮課長のマンションに戻ってきた私に、課長は酷く驚いた顔でドアを開けてくれた。


「帰ったんじゃなくてすみません。これを買いに行ってきたんです」


スポーツドリンクや栄養剤、ヨーグルト等が入ったコンビニのビニール袋を持って課長の部屋へと上り込む。


あの後、私が言ったことを素直に聞き入れたのか、課長はもう寝る時の格好になっていた。


いつもの様に、勝手に上り込むなとか、それを置いたらすぐに帰ってくれとか言わない辺り、私の言葉を素直に聞き入れたとかではなく、もはや単純に起きているのも辛いくらい、身体が怠いのかもしれない。


「熱、測りました?」


「いや。測ったところでどうにかなるわけじゃないし、誰かさんが言った通り、あれからすぐにベッドに直行したからね」


熱があって身体は怠くても、口は健在らしい。


< 502 / 621 >

この作品をシェア

pagetop