恋愛境界線
というか、この人は、私が住所変更しないことで通勤手当を多く受け取ってるんじゃないかと、ずっと疑っていたのだろうか?
だから、しつこいくらい、この件に関して何度も問い質してきたのだろうか。
住む場所が変わったところで、距離的には以前と大差ないから交通費も変わらないし、第一、課長のポケットマネーから出てるわけでもないのに。
「通勤手当の件はともかく、どうしてそこまで君は頑なに、住んでいる場所を私に隠すんだ」
……『しつこいくらい』というか、大分しつこい。
「あぁ、もう。答えます!答えればいいんですよね!!渚のマンションの近くにあるウィークリーマンションですっ」
「ウィークリーマンション……?」
「教えたら、絶対課長は経済的じゃないとか、色々ごちゃごちゃ説教してくると思って言えなかったんですよ!」
何より、ウィークリーマンションだと、繋ぎとして利用していることがすぐにバレる。
それならどうして、次に住む所がはっきり決まってもいないのに出て行ったんだ、とか言われるに決まってる。
「説教されるかもしれないのが嫌で隠していたなんて、君は子供か」
「ほら、やっぱり怒るじゃないですか!」
「いや、それは君が下らない理由で隠していたからだ」