恋愛境界線
「住む場所が決まったと言ってたくせに、それがまさかウィークリーマンションだなんて思わなかったよ」
あの時は、若宮課長と一緒にいるのがつらくて、早くあそこを出ることだけを考えてたから。
だから、急いで決める必要があったし――なんていう理由を、課長本人に言えるわけがない。
「私の家財は二次災害でダメになった物も多くて、ウィークリーマンションなら最初から揃ってますし」
賃貸マンションよりも賃貸料金が割高で、経済的じゃないとでも思っていそうな目の前の人物に、さらにマンション事情について説く。
「それに、賃貸料金は割高でも、短期で借りるならウィークリーマンションの方がお得だって言いますし……?」
チラリと上目遣いをするつもりが、視線が斜め上を向いた所為で目が泳いだようになってしまった。
「一体何の話だ。私はウィークリーマンションの利点などに興味はない」
「じゃあ、私がどこに住もうがいちいち怒らないで下さいよ」
「だから、住んでる場所について怒ってるんじゃない。隠していたことについて言及しているんだ」