恋愛境界線

会社に住所を偽って、通勤手当を多く受け取ったりなどということをしていたわけでもなく、ウィークリーマンションに住んでること自体に怒ってるわけでもない、とするならば。


「えっと、私が課長に話さずにいたことで、どうして課長がそこまで怒るのか、私には判らないのですが……」


「だから、それは――」


課長が苛立った様に声を上げた途端、それを遮る様にチャイムが鳴った。


「誰か来たんじゃないですか?」


「いや、宅配便かもしれない。まぁ、宅配ボックスがあるから気にしなくていい」


それでも、ピンポーンという音が4回ほど響き渡ると、さすがに気になってしまい、「私、ちょっと見てきますね」と、課長に断ってインターホンに出た。


「……芹沢君?誰?宅配?」


インターホンに出てすぐに、若宮課長が背後から訊ねてくる。


せっかく寝ていたのに、わざわざ起き出して私の後を追ってきた課長へ、混乱する頭で助けを求める様に無言で振り向いた。


だって、モニターに映し出されていたのは、支倉さんだったから――。



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