恋愛境界線
それから5分と経たずして、若宮課長は支倉さんからの差し入れを片手に、戻ってきた。
「あの、大丈夫でした?」
「何とか……まぁ、誤魔化しておいた。芹沢君も、今日はもう帰ってくれるかな」
寒気が酷くなってきたから寝たいと言う若宮課長から、支倉さんが持ってきたトートバッグを奪う。
「せめてこれだけでも仕舞ってから帰るので、若宮課長はもう寝て下さい」
そう言うと、起きているのが本当に辛いのか、珍しく「それじゃあ、頼む」と言って寝室に籠った。
ずっしりと重いバッグの中には、ネギや卵、フルーツなどが詰め込まれている。
もしかしなくても、支倉さんはきっとこれで、お粥か何かを作ってあげるつもりだったに違いない。
コンビニで出来合いのサンドウィッチなどを買ってきた私とは、とことん違う。
支倉さんが買ってきた物を冷蔵庫の中へと仕舞いながら、改めて支倉さんと自分の差に落ち込んでしまった。