恋愛境界線
自分はそんなにも感情が表に出る人間なのか、今まで気にしたことがないから判らない。
ただ、もし本当にそうだとするならば、私の若宮課長に対する気持ちも、目の前の支倉さんにはもう全てバレている様な気がして、足元がぐらつきそうになる。
支倉さんは静かに窓際に移動し、外の景色へと視線を移した。
「……本当はね、昨日インターホン越しに、若宮くんが芹沢さんの名前を呼ぶのが聞こえてたの」
指摘され、昨夜のことを思い出す。
確かに、若宮課長は私の名前を呼んだあの時は、まだインターホンが繋がったままの状態だった。
「具合の悪い若宮くんを芹沢さんが送ってきただけ……とか、単純に考えようとしたけれど出来なかった」
だって、私は若宮くんの性格を知りすぎているから――と、支倉さんの声からは、そのことに対する優越感ではなく、僅かな寂しさが感じられた。
「いくらそういう理由があったとしても、若宮くんは一線を引くのを忘れない。何の関係もない女性を、軽率に部屋の中までは招き入れたりしない人だもの」