恋愛境界線

「本当は、芹沢さんが慌てて否定してくれたのなら、私の思い違いだって思えたんだけど」


「……支倉さんがどう考えているのか判らないですけど、若宮課長とは本当に何もないですから」


だから心配しないで下さい、と言おうとした私の言葉に支倉さんの声が被さる。


「本当に何もないって言える?昨日のことを隠そうとした時点で、好きっていう感情くらいはあるわよね?」


「……少なくとも、若宮課長にしてみれば、それは全くないです」


「ということは、少なくとも芹沢さんにはあるってこと、か……」


好きという感情があるから。


好きだから


支倉さんに対して後ろめたい気持ちがあるから


だから、今はもうどんな態度をとったとしても、きっと不自然になってしまう。


もう誤魔化せない、と思った。


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