恋愛境界線
「何、これから二人で飲みにでも行くの?」
「えぇ、まぁ。飲みっていうか、ご飯を食べに行くだけですけど」
「へー。それって、俺もご一緒させてもらっても良い?」
「駄目よ」
きっぱりとそう答えたのは私ではなく、PCをシャットダウンさせ、椅子から立ち上がった支倉さんで。
「今日は、女同士で気兼ねなく色々話すつもりなんだから」
「じゃあ、俺は飯だけ食べたらすぐ帰るからさ。ほら、俺って独り身だから、夜に一人で飯食う日が続くと虚しくなってくるんだよね」
私ならば断わり切れないと踏んだのか、今度は思いっきり私に対して「良いよね?」と訊いてきた。
そんな奥田さんから視線を逸らし、チラリと支倉さんに視線を投げかける。
すると、支倉さんはわざとらしく大きなため息を吐き出して、「本当に食べたらすぐに帰ってよ?」と告げる。
明らかに嘘と感じられる様な軽い調子で、奥田さんは「判った判った」と頷いた。