恋愛境界線
* * *
「君は、今何時だと思ってるんだ」
「まだぎりぎり22時前じゃないですかー。シンデレラは0時まで夜遊びしてたんですから、セーフですよ」
「何がセーフなのか全く意味が判らないんだが?そもそも、どうしてうちへ来たんだ君は。何かあったのか?」
非常識なのは承知の上だけれど、エントランスのインターホンで呼び出した時点で追い返さない課長も課長だ。
優しいけれど、そんな優しさを優しくないとも思う。
「たまたま近くで支倉さんたちと飲んでいたので、ちょっと寄ってみました」
課長の部屋のドアの前で、敬礼のポーズを取る。
「だから、どうしてそれでうちへ寄るんだ?というか、酔ってるのか?」
「あー、課長ってば、今『寄った』と『酔った』を掛けましたねー?」
若宮課長は、「これは酔ってるな」と呟いた後、「近所迷惑になるから、とりあえず入りなさい」と言って、室内へと通してくれた。