恋愛境界線


「──ほら、酔い覚ましに」


目の前には、濃いめの緑茶が注がれた湯呑みを置かれた。


コーヒーや水しか飲まない人だと思っていたから、緑茶や湯呑みまで常備してあることに、僅かながら驚く。


「有難うございます。……課長、もう少しで《クレアトゥール》が発売されますね」


「どうしたんだ、唐突に」


「うーん、何ていうか、若宮課長に訊いてみたかったことがあって」


私は今25歳で、若宮課長は29歳。歳の差は4つ。


この年齢になると、4つなんて大した差じゃない様な気もするけれど、四年後の自分を想像するとなると全然違う。


改めて、今の課長がいかに凄いのかを実感してしまう。


後四年もあったとしても、きっとまだまだ今の課長には及ばない、と。


入社して随分経つのに、やりがいを感じる様になったのは、今のプロジェクトに携わってからで。


これからも今の会社で仕事を続けていくのならば、否応なく上に立つ立場になっていくはず。


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