恋愛境界線

「せっ……芹沢君!君、今、何をした?」


「何って、そんなの愚問じゃないですか。写真、撮っちゃいました」


じゃーん!と、今の課長の姿を撮影した画像を見せる。


「疑う余地がないほど、どこからどう見ても女性にしか見えないですよね!これ、ドン引きするのを通り越して、感心しちゃうレベルですよ」


くふふと笑うと、その隙を衝いて、若宮課長が私の手からスマホを取り上げた。


そのまま躊躇(ためら)うこともなく画像を消去すると、それを無言で私に突き返し、自分は室内へと逃げ込もうとする。


「課長、人の画像を勝手に消すなんて最低ですよっ!卑怯者っ」


閉まり掛けたのドアの隙間から手を差し込んで、課長がドアを閉めるのを防ぐ。


「何が卑怯だ。卑怯なのも最低なのも君の方だろう!許可なく勝手に人を撮ったくせに」


「そんな許可なんて、絶対下ろしてくれないじゃないですか!」


「私が言いたいのはそういうことじゃない!とにかく、君は今すぐこの手を放しなさい」


口論と同時に、手元はお互いにドアの開け閉めを巡って激しい攻防が続いている。


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