恋愛境界線

「もう目元、大丈夫?」


腫れはとっくに引いていたものの、頬骨の斜め上あたりに出来たアザはまだ消えていない。


とはいえ、それもメイクで誤魔化せる程度の薄さだけれど。


「はい、大丈夫です。ちょっとドアにぶつけただけですから」


本当にドジで自分が嫌になりますよーと笑って、アザが出来た本当の理由を誤魔化したものの、すぐに嘘を見破られた。


「ドアにね……。本当は何があったのか、奥田くんから聞いてるわ」


「奥田さんから……?」


「それと、芹沢さんに、殴ったのは悪かったって伝えてくれって」


「ちょっと、待って下さい……あの、どうしてそれを浅見先輩に……?」


思わぬ人物から奥田さんの名前を出され、無意識に浅見先輩へと距離を詰める。


「実は、付き合ってたの。いや、うーん、どうかな。付き合ってるといえるかどうかも怪しい関係なんだけどね」


そう言って、次にはそのセリフとは全く関係ない言葉が浅見先輩の口から飛び出した。


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