恋愛境界線
さすがに今回は見過ごせなくて、浅見先輩は若宮課長に全てを話したらしい。
「それに、もう奥田くんを止めて欲しかったの。私には無理だけど、課長なら出来ると思ったから」
それならどうして、と思う。
「それならどうして、三年前は協力なんてしたんですか?」
三年前に止めてくれていれば……と思わずにはいられない。
「同情、共感、そのどちらだったのかは自分でも判らないけど、奥田くんの気持ちに引き寄せられたのね、きっと」
「引き寄せられた……?」
「そう。彼の気持ちが判る気がしたの」
私には、それがどんな気持ちなのか判らなくて、黙ったまま浅見先輩を見つめる。
浅見先輩は私の真っ直ぐな視線に、困った様な表情を浮かべた。
「多分、話したところで、芹沢さんには判らないだろうけど」と。
判らなくてもいいから話して欲しくて、催促する様に「浅見先輩……」と、名前を口にする。
「私の場合は偶然だったんだけど、遭遇してしまったの――多分、今回芹沢さんが見た場面と同じ場面に」