恋愛境界線
それは私が目撃した光景と同じで、皆が帰った後、他人のPCを勝手に覗こうとしている奥田さんの姿だったという。支倉さんのPCを。
「思いつめた表情をしていたから、すぐに何をしようとしているのか察したわ。だから、訊いたの。それって自分の利益の為?それとも、嫌がらせの為?って」
奥田さんにとって、何らかの利益目的に走っての行為なのか、それとも単に支倉さんに恨みでも抱いての行為なのか。
「奥田さんは、何て答えたんですか?」
「どっちも、って。彼、軽くて何も考えてなさそうに見えるけど、頭は良いのよ」
私も奥田さんと話していて、頭の回転が速い人だと感じたことなら、確かに何度かある。
だとしても、過ちを犯したことを鑑みれば、愚かとも言えるのだろうけれど。
「奥田くんってね、学生時代は何においても常に一番で、いつも輪の中心にいたらしくて、それがずっと当たり前だったみたい」
私の個人的感情は抜きにして見てみれば、物怖じも、人見知りもしない印象から、人付き合いは良さそうな印象がある。
ノリが軽くて苦手だけれど、あの人のことだから、普段はTPOに応じて態度は変えていたと思う。
例えば仕事では、後輩には気さくで、上司には相手を持ち上げつつも、軽快なトークで自分のペースに持っていく、といった風に。
あの性格からして、それは想像に難くない。