恋愛境界線
「けど、この会社に入って、同期には若宮課長がいたのよね。向こうが自分よりも期待され、ちゃんと結果も評価され、その差に焦っている内にもどんどん先を行かれるわけでしょう?」
今までの自分の立ち位置が、若宮課長の存在によって逆転してしまった、ということか。
「年齢が同じなだけに、余計に対抗意識が強かったと思うし、相当悔しかったとも思うわけ」
しかも、奥田さんは常に輪の中心にいたそうだから、こんな思いをするのも初めてだったのかもしれない。
それなら尚更、その対抗意識を向上心へと変えて頑張れば良かったのに……。
そんな風に安易に考えてしまうのは、私がそこまで誰かに対して強い対抗意識を抱いたことがないからなのか。
何となく判る様な気もするけれど、浅見先輩の言った通り、私には本質までは理解できないのかもしれない。
「……それに、多分、奥田くんは支倉さんにも気があったと思うんだ」
本人の口から直接聞いたことはないけどさ、と言って苦笑した。
「だからだと思うんだけど、若宮くんと支倉さんが並んで話してた時に、遠目に見ながら、何でも持っていて羨ましいって言ったことがあって」
その気持ちなら判る。二人が一緒にいる姿は本当にお似合いで、それを見て、何度そう思ったか。
「一度でいいからアイツが挫折するとこを見てみたいって、そんなこと言ってた。歪んでるよね?」