恋愛境界線
「課長、一生のお願いですから!」
「馬鹿も休み休み言いなさい。君の一生のお願いなら、一生分の迷惑を被ったあの朝に聞いてあげたじゃないか」
そうだった!こっちはすっかり忘れてたっていうのに、この状況でよく思い出せたものだ……。
「じゃあ、」と気を取り直して、再びドアの向こう側にいる課長に朗らかに、とある提案を持ちかける。
「じゃあ、若宮課長――私とルームシェア、しませんか?」
「しない。君とは間違ってもしません。する理由が微塵も見当たらない」
「理由ならありますっ!私の住んでいたアパートが火事の被害に遭って、それで困ってるんです。だからここは一つ、人助けと思って……!徳を積むと思って……!!」
さすがにこういう理由があると判れば、いくら課長でも、そう冷たくあしらったりはしないはず。
「君以上に、今の私の方が確実に困っている」
酷い……。酷すぎる。
「寝る所がないというのなら、ホテルに行きなさい。お金さえ払えば、私よりもよっぽど快く君を迎え入れてくれるよ」
つまり、課長はお金を払われても嫌だと言いたいんですね?