恋愛境界線

「課長からすれば、大して変りない様に見えるかもしれないですけど」


しかも、入社三年目にして、ようやく新入社員並みのレベルに立てたポンコツだけど。


「じゃあ、次は若宮課長が話す番ですよ!」


気恥ずかしくなって、若宮課長が何か言い出す前に私から勢い良く話題を振る。


「私が?何を?」


「えーっと、そうだなぁ……うーん。話したいこととか、ないんですか?」


「話したいこと?……いや、これといって特に」


「一緒にご飯を食べている相手を前にして、そのセリフはちょっとどうかと思いますけど?」


そもそも、じゃあどうしてご飯に誘ったのかを問い質したくなる。


あ、この間のお詫びって言ってたっけ。


けど、それならどうしても今日でなければいけないわけじゃないんだし、わざわざ遅くまで私を待たず、日を改めれは良かったと思うのだけれど。


それなのに、長々と待っていてくれたってことは、もしかして、浅見先輩の件で少しは私のことを気に掛けてくれたのだと、ほんのちょっとくらいは自惚れても良いの……かな?


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