恋愛境界線
「芹沢君、私が特に話したいことがないからと言って、君まで黙り込む必要はないんだが?」
「そういうわけじゃないんですけど」
ただ、ちょっと自惚れに浸っていただけで。
「かといって、私が一人で喋るのも、それはそれで馬鹿みたいじゃないですか」
「君は、今更そんなことを気にするのか?」
それは一体、どういう意味ですか?というツッコミは、答えを聞きたくなくて飲み込んだ。
「っていうか、課長のマンションを出て、一人で暮らす様になってからというもの、独り言が増えてやばいです」
これまでは一人暮らしをしていても、独り言なんて滅多に口にしなかったというのに。
「ところで、若宮課長は引っ越す予定とか、ないんですか?」
特に話したいことはないと言っていた若宮課長に、私の方から話題を振ってみる。
「なぜ君の独り言が増えたという話題から、急に私の引っ越しの話題へ移るのか、その流れが判らないんだが」