恋愛境界線

「あそこは、両親が海外に行く前に、私と姉のために購入してくれたものなんだ」


ん……?私の記憶と課長の会話に、軽く齟齬(そご)が生じてる気がする。


「ただ、私が泉と婚約した時には、姉はもう余所(よそ)で一人暮らしを始めてしまったから、私が譲り受けただけで」


「……それじゃあ、課長のご両親はその……、海外で亡くなられたんですか?」


「は?何を縁起でもないことを言い出すんだ、君は。私の両親は今も健在だ」


「えっ!?ちょっと待って下さい!以前、ご両親は早くからいないって言ったじゃないですか!」


確かに以前、この耳でしっかりとそう聞いた。


早くから両親がいなかったから、面倒を見てくれたお姉さんに頭が上がらないと。


けど、“早くからいなかった”という両親が、若宮課長が今住んでいるマンションを、姉弟二人のために購入したとなると……どういうこと?


あのマンションはまだ新しく、建てられてからそう年数が経過していないから、時間的な矛盾が生じるわけで。


ってことは、アレ?


「つまりは、どういうことですか……?」


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