恋愛境界線

「まったく、君は。誰がこの世にいないと言った。日本にいないだけだ」


「ま、紛らわしいんですよ!!話し方というか、言い回しが!!」


口紅のエピソードにしても、亡くなったお母さんとの思い出話のつもりで聞いていたのに。


良いエピソードであることに変わりはないし、ご両親が健在で何よりだけれども。


「本当は、私も一緒に海外に連れて行くつもりだったみたいだけど、その頃の私はまだ幼かったから、友人と離れたくなかったんだ」


「友達……いたんですね」


「何だって?」


「いえ、何でも……」


「姉とは歳が一回り以上離れているんだが――当時の姉は就職してまだ二年目で、仕事も大変だったはずなのに、自分が保護者代わりになるからと言って、色々と私の面倒を見てくれたから頭が上がらないんだよ」


「そういうことだったんですね」


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