恋愛境界線
そういうことだ、と呆れた様に言う課長の顔を見ながら、本当はもっと若宮課長の話を聞きたいと思った。
こんな風に色んな話をして、ずっと隣に居られたらどんなに幸せなんだろう、と。
それが無理なことは、いい加減判っているけれど。
「課長、お話ししておきたいことがあるのですが」
ピンと背筋を伸ばし、両手を膝の上に乗せ、正面から課長を捉えた。
「今のプロジェクトが成功したら、私は他へ行こうと思います」
「……他、とは?」
「それに関しては、今はまだ考えてる最中なんですけど」
私は意志が弱いから、若宮課長の側にいる限り、課長のことを諦めることが出来ないと思う。
今日みたいに、何だかんだ自分に言い訳をして、都合の良い理由をつけて、側にいようとしてしまう。
だから、そうする方が良い。