恋愛境界線
scene.29◆どちらでも同じならば
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「《クレアトゥール》の完成と発売を祝って、乾杯!」


音頭を取った人の言葉に続いて、「乾杯!」と皆の明るい声が続く。


《クレアトゥール》が発売され、早一週間が経過していた。


当初見込んでいた数字を上回る予約数に加え、販売数は今もまだ順調に伸びている。


「とはいえ、販売当初は話題でそれなりに売れるから、問題はこれからよね」


今日は打ち上げと称し、プロジェクトメンバーで飲み会が開かれ、ほぼ全員が参加していた。


若宮課長は離れた席に座っていて、私は隣に座っている支倉さんに話しかけた。


「でも、とりあえずは無事発売されて良かったですよね。私なんて、発売前日まで落ち着かなかったですもん」


「そうなの?何か心配だったとか?」


「はい。例えば、イメージモデルのあの女優さんが事故を起こしたり、直前になってスキャンダル記事が出たらどうしようとか、あとは、ネットで炎上したらとか、もうとにかく無駄に色々と考えちゃって」


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