恋愛境界線
ドリンクを口に含んだタイミングで訊ねられ、思わず吹き出しそうになった。
かろうじてそれを堪えたのは、私が飲んでいるドリンクがレッド・アイだったからだ。
もし吹き出していたら、胸元が血に濡れたかの様な大惨事になるところだった。
噎せる私に、支倉さんは「ごめんごめん」と言いながら、おしぼりを手渡してくれる。
それを口元にあてると、おしぼりには吐血した様に、トマトのくすんだ色が移った。
「本当にどこからそういう情報を……って、若宮課長からですか?」
「うん、お詫びにご飯に連れて行ったって。上手くまとまったのかと思ったのに、その割に若宮くんの様子はどこかおかしいし」
何かあったの?と、支倉さんが遠慮がちに私の様子を窺ってくる。
「何もないですよ。第一、約束したじゃないですか、若宮課長からは手を引くって」
「律儀ね、そんなこと本当に守るなんて」