恋愛境界線
「どうしたんですか、そんなに急いで……。っていうか、二次会は?」
「断ってきた。それより、泉が――支倉君が、君が私に話したいことがあるみたいだと言うから」
「支倉さんが……?」
若宮課長が、息を整えながら頷く。
「何やら思いつめた様な深刻な表情だったというから、また何かあったんじゃないかと思って」
さっきの支倉さんのメールはこれか、と思いながら、スマホをバッグに戻す。
「何もないですよ。支倉さんは、単に課長が二次会に行きたくないのを察して、断る理由を作ってくれたんじゃないですか?」
そう笑って惚ければ、納得のいかない様子で「そうなの、か……?」と眉根を寄せた。
「そうですよ。《クレアトゥール》も無事に発売まで漕ぎ着けましたし、今の私には悩みどころか、思い残すことすら何もないんですから」
「……強がっているわけではなく、本当に、何もないんだね?」