恋愛境界線
ドアの中央上部にあるドアスコープに突きつける様に、スマホのディスプレイを掲げる。
「これ、どういう意味か判ります?」
メールの送信履歴には、課長の知らないPCのメールアドレス。
「消去される前に、自分のPCメールに画像を転送しておいたんです」
「……何だって?」
「私に優しくしなくても、後悔しないんですよね?課長は」
再度、念を押す様にそう言うと、酷く機嫌の悪そうな声が返ってきた。
「脅迫する気か」
「脅迫じゃないですよ、これはお願いです」
「どこがお願いだ。思いっきり脅迫じゃないか。そういうことをする人間は最低だ」
軽蔑に値する、と吐き捨てる様に言った課長の口調は、いつになく冷たく響いた。