恋愛境界線
「せっかくの“一ヶ月記念”だから、これを君にあげよう」
わけも判らずに手を差し出せば、以前に若宮課長に返した合鍵が手のひらの上に載せられた。
「まぁ、僕の方が退社時間が早いから、使う機会はないかもしれないけれど」
「いえ、そんなことはないです!持っていることに意味があるんです!!」
念の為、「……本当に私がもらっても良いんですよね?」と訊ねてみる。
「駄目なら、わざわざ渡したりしない」
「もう絶対返しませんからね?」
「そうしてくれると助かるよ」
その言葉の意味に照れ笑いをすると、若宮課長にキスをされた。
そっと触れてすぐに離れたけれど、課長の顔はまだすぐ側にある。
「……えっと、これも一ヶ月記念のプレゼント、ですか?」