恋愛境界線

「せっかくの“一ヶ月記念”だから、これを君にあげよう」


わけも判らずに手を差し出せば、以前に若宮課長に返した合鍵が手のひらの上に載せられた。


「まぁ、僕の方が退社時間が早いから、使う機会はないかもしれないけれど」


「いえ、そんなことはないです!持っていることに意味があるんです!!」


念の為、「……本当に私がもらっても良いんですよね?」と訊ねてみる。


「駄目なら、わざわざ渡したりしない」


「もう絶対返しませんからね?」


「そうしてくれると助かるよ」


その言葉の意味に照れ笑いをすると、若宮課長にキスをされた。


そっと触れてすぐに離れたけれど、課長の顔はまだすぐ側にある。


「……えっと、これも一ヶ月記念のプレゼント、ですか?」


< 603 / 621 >

この作品をシェア

pagetop