恋愛境界線
「それで君は、僕に対してはソファがあるでしょうに、とか言い出すんじゃないだろうね?」
課長がリビングにあるソファを指し示す。
「えっ、まさか、まだ根に持ってるんですか!?」
「そんなわけがないだろう。ただ、君の言い方がベッドの占領宣言に聞こえたものだから、念のため訊いてみただけだ」
「そういうつもりで言ったんじゃありません。もうっ!!課長がソファに寝るって言うなら、私は帰りますからね!?」
「僕には、君が一体何をそんなに怒ってるのか判らないんだが?」
「だってそんなの、課長が鈍感だからに決まってるじゃないですか!」
さっきまで良い雰囲気になりかけていたのに、どこをどうしてこんな流れになってるのか。
こうなると、もうムードも何もあったものじゃない。せっかくの勢いが萎んで、今日は帰った方が良い様な気さえしてくる。
「すまない。その、自分の勘違いだったらみっともないと思って」
「……シャワー、借りても良いですか?」
「良いよ。待ってるから、ゆっくり入っておいで」
気恥ずかしさから、まるで不貞腐れた様な態度になってしまった私をくすくすと笑う若宮課長に、こくりと頷いてバスルームへ逃げ込んだ。