恋愛境界線
シャワーを浴びて戻ると、テーブルの上は綺麗に片付いていて、リビングには課長の姿がなかった。
そっと寝室へと足を踏み入れると、読書をしていた若宮課長が私を見て苦笑した。
読みかけの本を閉じ、マンションへ来た時と同様の姿で立っている私の元へとやってくる。
「やっぱり帰る気になった?そんなにカッチリと着込んで」
「違います。だって、こういう時ってどうすれば良いのか、判らなくて……」
バスタオル一枚で戻るのは、勢い込んでいる感じがして気恥ずかしいし、かと言って、彼シャツみたく、下着の上にシャツ一枚の姿で出て行くのも違う気がして。
経験はゼロで知識も乏しいから、こういう時の勝手がまるで判らなくて、おまけに、悩んでいる内にどんどん緊張が高まるし。
散々悩んだ末、とりあえず今日着ていた自分の服を再び着直したものの、やっぱりここはバスタオル一枚が正解だったのかも。
「バスローブがあったと思うけど、それとは別に、今度君のナイトウェアを買いに行こう」
「……なんか、すみません」
ムードぶち壊しで、課長なんて内心では興醒めしてるかも。
自分の選択ミスが恥ずかしくて俯いていると、若宮課長につむじにキスをされ、そのままベッドへと優しく手を引かれた。