恋愛境界線
無意識に短く声が弾み、それを恥ずかしいと思うのに、その気持ちとは裏腹な思いが込み上げる。
あんなに怖気づいていたのが嘘の様に、もっと、と欲張りな気持ちが溢れ出す。
「課長、すき……すきです」
「それなら、ちゃんと名前で呼んで」と言われ、最初の一文字を口にする。
『馨』と呼ぼうとしたけれど、『か』だけで恥ずかしくなって、思わず唇を噛んだ。
そんな私の唇を、若宮課長は親指でなぞりながら、「遥、今のは課長の『か』なのか、馨の『か』なのか、どっち?」と、からかってくる。
その間も、課長は私に触れることをやめない。
胸から脇腹、へそと辿り、足の付け根へと触れてくる若宮課長の手に、身体が熱を持っていく。
唇を噛んでも、声を抑えることが出来なくて、潤んだ瞳のせいで、視界に映る課長の顔がぼやける。