恋愛境界線

一歩外に出れば、部下として、上司として、お互いにするべきことをして、目の前の仕事に打ち込むだけだ。


職場での私は、若宮課長の様に仕事に真摯に向き合い、全力で取り組み、最善を尽くすだけ。


今の仕事にやりがいを感じ、充足感を得る時もあれば、怒られて悔しい時も、ミスして落ち込む時もある。


楽しいことばかりじゃないけれど、いつだって好きな人に恥じない自分でいたい。


そうしている限り、(やま)しさも引け目も感じることなく、若宮課長の隣に並んでいられるから。


見つけた自分の居場所を、自分の手で大事にしたいから。


だから、


頑張った先に待つ楽しさと幸せの為に


ずっと側に居て欲しい、と言った若宮課長の願いを叶える為に


ずっと側に居たいと願い、ずっと側に居ると誓った自分の想いを守る為にも――


「さてと、今日もお仕事頑張りますか!」


私の声に応える様に、ハムが顔を上げてチュゥと喉を鳴らした。







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