恋愛境界線

やったー!と喜ぶ私に、若宮課長は念を押すことを忘れなかった。


「ただし、次のことを守ってもらう」と。


「一つ、ここで暮らすことを職場では一切口外しないこと。それとなく匂わすことも禁止だ」


課長の家訓もどきは更に続く。


「一つ、お互いのプライバシーは尊重しあうこと。友人知人家族に限らず、他人をここに呼ぶことも禁ずる」


それらが守られなかった場合、即刻ここから出て行ってもらうと、課長は言い放った。


滞在期間は改修工事が終わるまで。終わったら速やかに出て行くこと。


その際には、例の画像をきちんと消去することも、条件として付け加えた。


こういう時でさえ、理不尽な要求を突きつけてこない辺り、ものすごく課長らしいと思った。


「──それじゃあ、芹沢君はこっちの部屋を使いなさい」


リビングから続く二部屋の内の一室を、課長は私に与えてくれた。


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