廓の華
思わぬ問いに、どきりとする。
もちろん、聞いたことはある。
男性が女性に紅を贈るのは、口づけで返して欲しいとか、唇を奪いたいだとか、そういう隠された意味があるのだと遊女たちが楽しそうに噂をしていた。
こんな高級品を恋人ではない相手に贈るのは、大胆で粋な告白だ。
それをわかって聞いているの?
顔を上げると、いつもの微笑みはなかった。感情の読めない表情で、じっとこちらの反応を見つめている。
久遠さまの考えがわからない。意味通りだとしたら、口づけをしたいと思ってくれていることになる。
つい、目の前の薄い唇に視線が奪われた。男なのに艶があって、柔らかそう。
その時、久遠さまがわずかに首を傾けて距離を詰めた。
あ、触れる。
ぎゅっと目を閉じ、温もりを待った。
「ふっ」
しかし、唇の代わりに無意識にこぼれたような優しい笑い声が届く。
驚いてまぶたを上げると、甘やかな眼差しが注がれていた。
「恥ずかしいか? 頬が赤い」
「そ、そんなことは」
「牡丹は肌が白いからすぐわかる。ほら、首まで桃色だ」