廓の華
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「久遠さまは、お侍さまなのですか?」


 座敷に並んで座り、ついそう尋ねていた。

 美味しそうに焼酎を嗜む彼は、数回まばたきをして口元を緩める。


「仕える主人がいるという点では侍かもしれないね。まぁ、なんとも言えない」


 またはぐらかされてしまった。


『俺の働いている屋敷の旦那が、ここに通っているようなんだ』


 そういえば、初めて彼が遊郭に来た日にそんな話をしていた。金払いのよい商人に雇われた護衛なのだろうか。

 知らない一面にドキドキした私は、興奮冷めやらぬまま、盃を持たない方の手を取る。


「ほら、立派な竹刀ダコ。やっぱり、お侍さまなのですね。でなければ、あれだけ自由に柄は操れないでしょう」


 彼の素顔に近づけた気がして、浮かれたまま顔を上げると、久遠さまは少し驚いた表情で私を見ていた。

 間の後、優しく手を握られて我に返る。


「すみません、勝手に触ったりして」

「なにをしてもいいよ。牡丹から近づいてくるなんて初めてだな」


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