廓の華

 まるで、期限付きだと言わんばかりだ。

 〝久遠さまが、私を買ってくれればいいのに〟

 喉まで出かかったが、口には出せなかった。こんな高頻度で通ううえに、高価な贈り物をしてくれる。

 私は、貢いで欲しいとは願わない。

 だけど、もし、花街で汚れてしまった私を受け入れてくれるなら、貴方の側にいたい。

 他の客よりも見栄えがいいから、金払いがいいから、そんな理由じゃない。

 私を心から綺麗だと褒めてくれる。花魁をひとりの人間だと認めて、接待をしなくていいと言ってくれる。


『君は、俺と似ている』


 初めての夜に告げられたあの意味を、今なら少しわかる気がした。

 きっと、久遠さまは働いている屋敷の主人には逆らえないのだ。そして、仕事を辞められない理由があるのだろう。

 花街に囚われる私のように。

 その時、彼が盃を置いてこちらを見た。軽く眉を寄せていて、どこか不満げだ。


「お酒が口に合いませんか? 新しく仕入れた秘蔵酒ですが」

「いや、そうじゃない。……牡丹は俺をカタブツだと思っていたのか?」


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