廓の華
「牡丹は、ずっとここで働いているのか?」
「はい」
「元は上流階級の出だろう?」
言い当てられて、言葉が詰まった。
なぜそれを、と考えていたのが顔に出ていたのだろう。彼は静かに口を開く。
「廓言葉を使わないのは、教養があるからだと思っただけさ。訛りなく話すだけで、育ちが出るだろう?」
彼は頭が切れるらしい。ひどい訛りや一人称を統制するために、遊郭では廓言葉が使われている。
私の口調を気に留める客なんてほとんどいないのに、小さな癖に気づく性質のようだ。
「事業がうまくいかなくなって、借金のカタに売られました。ここではよくある話です」
「なるほど。ここで巡り合わせたのも、なにかの縁かな」