廓の華
この出会いを縁と言うのか。
決して裕福な暮らしではなく、身なりを整えたり、お付きや禿の世話に金を払うだけで借金が増えていく。好きでもない男に体を許し、偽物の愛をささやく生活なんて、すぐにでも辞めたかった。
決して明るい気持ちで生きてはいなかったが、彼がかすみやを訪れて私を指名しなければ、この夜はなかったのだ。
不思議と、彼との会話に嫌悪感はない。こんな感情は初めてである。
「久遠さまは、どうしてここへ?」
「知人にかすみやの話を聞いてね。俺の働いている屋敷の旦那が、ここに通っているようなんだ」
詳しくは語らないものの、使用人を数十人抱えるほどの大屋敷に仕えているらしい。
目を引く外見と反して女遊びに縁がないようだが、自分を雇う主が入れ込む遊郭がどんなものか、興味を持ったのだろうか。
「かすみやは、久遠さまの目にどう映りますか?」
「想像とさほど変わりはないよ。ただ、君だけが違ったかな」