廓の華
禁忌〜きんき〜
穏やかな光が障子の隙間から差し込む。隣を見ると整った寝顔が目に入った。すやすやと定期的に寝息をたてる彼は、まだ夢の中だ。
ご褒美だと言わんばかりに、しばらく至近距離で美しい顔を眺め、まだ日が昇りきる前に布団からはい出た。
机に向かうと、事前に用意していた墨をすり、さらさらと筆を走らせる。
「ずいぶんと早起きだな」
ふいに声をかけられて、視線をやった。
布団に横たわり、気だるげに前髪をかきあげた久遠さまがこちらを見ている。まだ寝ぼけているのか、少し舌っ足らずな口調もゆっくりとした動作も、暴力的なまでの色気だ。
「すみません、起こしましたか」
「あれだけ熱烈な視線を感じたらな」
眺めていたときには起きていたらしい。
許可も取らずに寝顔を堪能していたのが恥ずかしく感じたが、彼は相変わらず勘違いしそうなほど愛しげな視線をこちらに向けていて、咎める様子はない。
「なにをしているんだ?」
「文をしたためておりました。久遠さまにお渡ししたくて」
「文?」