廓の華


「背中、痛いか」


 ふと、そう尋ねられて小さく頷く。身体を起こした彼は軽々と私を横抱きにして寝室に運んだ。

 普段の座敷の褥とは、比べ物にならない粗末な敷き布団だ。豪華な屏風も、いい匂いのする香油もない。真っ暗な中で、月明かりが身体を照らした。

 久遠さまは、目の前で乱れていた長襦袢を脱ぎ捨てる。露わになった身体は想像よりも鍛え上げられており、硬い胸板や、腹筋の筋に男らしさを感じてドキドキした。

 しかし、それ以上に気になったのは無数の傷痕だ。消えかけているものもあれば、深手を負ったであろう大きな痕もある。

 激情家の印象はないが、実は血気盛んなのか? もしくは、護衛の職務で、幾度となく危険な目に遭ってきたのかもしれない。

 彼をもっと知りたくなって口を開こうとするが、その心中を察したように行為は激しくなり、どろどろに甘やかされていく。徹底的に気持ちいい場所を攻められ、言葉にならない声が漏れる。

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