廓の華
愛しくて、嬉しくて、なにも考えられないほど幸せだ。久遠さまも、そう思ってくれてたらいい。この先になにが待っていようとも、ふたりなら乗り越えていける。
身請けの前日に足抜けする私は、どうしようもなく罰当たりだ。借金を返済してもらっておきながら、別の男性に心も身体も差し出している。
この熱は罪になる。この愛は許されない。
「牡丹」
うわ言のように名を呼ばれて、唇を寄せたところから白い肌に赤い花が咲いていく。隅々まで可愛がられ、快感を覚えた身体は何度も高みへ押し上げられる。
「……だめだ、際限なく欲しくなる」
熱に浮かされて無意識に漏れる久遠さまの声が甘くて気持ちがたかぶる。時折り、動きに合わせて息を詰める彼が愛しくてたまらない。
触れた先から伝わってほしい。
この世の誰よりも好き。他になにも見えなくなるほどあなたに夢中なの。つらくて悲しくて痛くて、そんな真っ暗な人生の中で久遠さまだけが希望の光。
今さら自分のことを言わなくていい。久遠さまが話したくないのなら、本音を語らなくていい。
初めて一線を越えた夜の熱は、深く私の記憶に刻み込まれた。