廓の華
想いのままに抱きついた。
倒れたと思っていたのは煙のせいで見間違えたのかしら。それとも、一時的に意識を失っていただけ?
やはり久遠さまは救世主だ。あの燃え上がる炎の中から私を救い出して守ってくれた。ふたりとも生きている。
「お怪我はありませんか? 痛いところはありませんか? 貴方を助けるつもりが足を引っ張ってしまいました。ごめんなさい、本当にごめんなさい」
首元に擦り寄ると、たしかに体温が伝わってきた。嬉しさと安堵と言葉にしきれないほどの感情があふれる。
「久遠さま、生きていてくれてよかった。心から、この世で誰よりも愛しています。私とともに生きてほしい。こんなになってしまった私は、もういりませんか……?」
背中に回っていた腕に、ぐっと力が込められた。強く強く抱きしめられる。
感情をまっすぐに伝えてくる抱擁はいつもの優しいものではなく、力強くて少し苦しいほどだった。