廓の華


 大好きなたくましい腕だ。硬い胸板の感触も、愛しいものを包むような温かさも全身で感じる。


「……いらないわけ、ない」

「きっと、私の目は治りません。見えないけれど、火傷だってしているはずです。醜い体でもいいのですか?」

「どんな姿になったって、俺は……」


 耳元で震えた声がした。どこか苦悩に揺れる響きに不安が生まれる。


「久遠さま……?」


 呼びかけると、沈黙の後、後頭部を優しく撫でられた。触れてはいけない貴重品にこわごわ触れるような手つきだ。それでも私を抱く腕は離れない。


「愛している。……俺が貴方を幸せにする」


 大きく胸が鳴った。

 視界が真っ暗でも、身体中が痛くても、そんなの気にならない。


「……初めて、愛していると言ってくれた……」


 無意識に思考が漏れ、いつのまにか再び意識を手放していた。

 抱く腕は力強く、安心感で心が満たされる。ふわふわとしたまどろみの中、どこか聞き覚えのある声が夢の中で頭に響いた。

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