王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
で・eye『加藤さん、きれいです』

1『My name is アリ カトウ』

1 My name is アリ カトウ


 高3の5月がこんなに悲惨だなんて思わなかった。
 ゴールデンなウィークっていうのは毎年そこにあるものじゃなかったらしい。

『まだ進路が決まらないなんて。我が校の進学率を落とすのだけは勘弁ねがいますよ、ミスタ・アリ・カトウ』
 いや、おれは加藤 (あり)なんで、そこんところひとつ。
 と、毎度むかつく担任のガイコツマンは英文法の教師だけど。
 絶対にわかっていておれをフルネームで呼んでいる。

 生まれてきてくれて『アリガトウ』だなんて。

 売れない芸人みたいなセンスをひけらかす市役所勤めの父さんがつけた、おれの名前。

 同じく受験生な中3の弟は、加藤 虎之介(とらのすけ)

 なんでも虎退治で有名な加藤清正の幼名だそうだけど。
 退治された虎みたいな根性なしで。
 おれのお古のスクールバッグやら半強制購入のデバイスやらが使えるという理由で母さんに押しつけられた進学先――つまり来年はマイ・スイート母校――に、文句も言わず進路決定。

 意志薄弱! 日和見主義! 弱肉強食!

 最後のはちょっとちがう気がするけど、仕分けられれば弱肉くんなのはまちがいない。
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