王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
「加藤?」
 呼びかけと同時にうしろから椅子を押されて膝かっくん。
「うわっ」
 ガタガタと騒々しく揺れる机にしがみつきながら、背後でゲラゲラ笑う男の声に、突然ひらめいた。
 中途半端人生の新たな選択肢。

 親の言いなりはイヤ。…な気がする。
 自分のしたいことは、わからない。
 ここでループしていたおれの明日を、助けろ木村。

「て…め。木村っ」
 あいうえお順の出席番号が続きなせいでグループ活動はなんでもいっしょ。
 おまけに習熟度別に仕分けされる英語と数学も同じケージに押しこめられるブロイラーズ。
「なんだよ、おまえがボケラッとしてるからだろ」
「な…」
 いやいや、その暴言はこの際、許す。
 レッツ、ギャンブル。
 ふってわいた第3の選択肢。
「木村。おまえ、進路志望――どこ?」
「はあ?」
 当然の反応だけど、ルーレットはもう回してしまったのよ、木村くん。
「おれ、ガイコツマンに、今から進路志望書を出さなきゃなんなくてさ。おまえと同じとこにするから、ちっと教えてくれろ」
「なにそれ。愛の告白? おまえ、おれと離れたくないの?」
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