王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
 この一件で、透明人聞からダメ人間に昇格したおれは、ガイコツマンにとってはもう世話の終わったブロイラー。
 教師が堂々と生徒を出荷用コンベアーに載せられるネタを、わざわざ差し出しちまったとは。

 バック・トゥ・ダ・18分前のおれ! 
 …ってか、木村コロス。
 なにが東大だ。

 いや、そんな口からでまかせ男のひと言に
『そうか。こっちがまだ決められないなら、あっちに却下されればいいんじゃん?』なんて。
 情けなくも勝ち誇った誰かさん、求む猛反省。



 とほほ気分でエレベーターに乗って。
 1階ボタンを膝げり。
 はあああぁああ、と腹に溜まった怨念を吐きながら、開くドアの気配に、お受験ゾンビ戦士、一歩前へ。
 とたんに胸にぶつかってきたなにかによろけて、またエレベーターのなかに逆もどり。
「…ってえー。気をつ…ぅっ」
 そこでうなったのは、なにかに百トンの重さで圧しかかられたからだ。
 ドン! と鈍い音を立てて背中が壁に激突。
 悪夢のデ・ジャ・ヴ。
 勝手に押された再生ボタン。
 おれを身動きできなくしたのは、もやし並に細いくせに、重たい音楽室の防音ドアをバン! と、ひと突きで90度押し開けた異世界人。

「ちょ、おま」
「ちくしょ! まさか、こんなとこで……」
「おい」
「なんなんだよ。な…んで、おればっかりっ」
「おいって? こら」
「逃げないと! どこか遠くに行かないと!」

 まったく会話にならないまま、どちらもボタンを押していないのにエレベーターが動き出す。
 なんだよ? どこに行くんだよ?


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