王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
「あの、加藤さん……?」
 突然名前を呼ばれて。
 のけぞった頭がガン! とエレベーターを揺らすほどの勢いで内壁に激突。
「…っつううう……」
「あ、あ、ごめんなさい! あの、えと、おどかすつもりじゃ……。大丈夫…です?」
「…………」
 …なわけ、あるかっ!
 おまえ誰? 
 おまえナニ?



「あの……、落ちつきましたね」
 断定されてムッカリ。
 おれたちはやっとエレベーターを出て、たらたらと廊下を教室棟に向かって歩いている。
「ごめんなさい。あなたといると、その――、すごくラクなんで、おれ――」
 はぁああああ?
 ヤクザさん顔負けのおれのガン睨みに、マチダはびくっと肩を揺らした。
「えと、あの――…」
 うるせー。
 ヒトの顔色をうかがうな×××野郎。
 あきらかに人種差別な呼称は脳のなかでも理性の伏せ字。
「ごめんなさい。自己紹介もまだでしたね。あの、おれ、1年D組の町田ー海(ひとみ)っていいます。東京の町田市に、数字のーと海でヒトミです」
「…………」
 なに必死に解説してやがる。ヒトミなんて、どんな字だって
「女みてー」
 おれのあきらかなイヤガラセに、町田はうつむいて笑った。
「ですよね」
「…………」
 むかつく。
 いじめられっ子ちゃんなのか? おまえ。

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