王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
 おれはおまえが異世界人だろうが、×××野郎だろうが、かまわないけど。
 やられっばなしで人生投げてるやつとは関わりたくない。
「…………」
 ――そうか!
 突然おれは自分を理解した。
 ことなかれ主義の風まかせ男のくせに、おれはイヤなんだ、やられっぱなしは。
 親に決められた人生を歩むこと=やられっぱなし。
 なんだ。そうじゃん。そうだったんじゃん。
「加藤…さん――…」
「あ?」
「あの、加藤さんのことはおれ、入学した頃から、知ってました」
「なんで?」
 問い返して初めて、会話が成立していたことに気づいても、もう遅い。
「あの……、見たこともないほど、きれい…だったんで」
 プププププっと鳥肌がたって。
「歯を食いしばれっ」
 手が勝手に町田の胸倉をつかんでいた。
「や…、あの、だから説明しますからっ」
「いらん!」
 鳥肌のたった腕をシャツの上からこすりながら、ずんずん歩き出すおれの横を、町田はさして大変でもなさそうについてくる。
 どうやら見かけを裏切るハイポテンシャルな肉体の持ち主らしい。
 つまり男の劣等感をあおる、最大イヤなやつ、ってことだ。
「加藤さん!」
「うるせー」
「お願いです。聞いてくれないと、死にますっ」
「…………」
 むかつき度一気に急上昇。

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