王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
 向かいの芸術棟の2階から聞こえてくるギターとドラムの音。
 軽音楽部!
 音楽室は防音だ。
 つまりやつらはドアを開けているわけだ。

 リコーダーもまともに吹けないおれが言うのは悪いけど。
 文化祭でアニメソングなんかやって喜んでいるようなやつらが『めざすのはプロのミュージシャン!』とか吠える自信て、どこからわいてくるの?
 うらやましすぎて、いっそ腹立たしいっちゅーの。
「…………」
 考えたのは一瞬。
 静かに開いたエレベーターに乗りこんだおれの指は、めざす英語課研究室のある4階ではなく、ぷちっと2階のボタンを押していた。


 昼休みまで趣味にかまけているなんて、この時期じゃもう下級生に決まっているから。ストレス発散のお説教モード発動。
 ケチな学校はまだエアコンを入れてくれないし。
 いくらシャツ1枚でも汗をかきそうな夏日でも、ドアを開け放って騒音をまきちらしちゃイカンでしょう。
 おれは、バカでもアホでも最上級生。
 今しか使えない権力は、きっちり行使させていただきますよ。

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