王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
どこ見てる? 耳?
思わず手が耳を隠したのと、やつがため息をついたのはたぶん同時。
「ほんと、近くで見ると、こわいくらいきれい」
「――――!」
脳内絶叫。
母さん、こわいよ。こわい子がいるよ。
「や…、うそっ!」
突然、目の前の男がのけぞった。
盛大に目と口をあけて、やっぱりズレた視線で、おれの肩のあたりを見ている。というよりもはや凝視。
なんだ?
振り向いても当然そこには誰もいなくて。
床に着いた両手と尻でずりさがると「やばっ」聞こえた小さな声。
「すみません! なんでもありません!」
首筋まで真っ赤にした細っこい身体で正座して、床につきそうなほど頭を下げたやつが、次の瞬間にはバッタのように立ち上がっていた。
「忘れてくださいっ」
ぺこりと膝まで頭をさげて。
重たい防音ドアをベニヤ板かなにかのように豪快に押し開けたやつの背中が、ゆっくり閉まるドアの向こうに消えても思考停止。
思わず手が耳を隠したのと、やつがため息をついたのはたぶん同時。
「ほんと、近くで見ると、こわいくらいきれい」
「――――!」
脳内絶叫。
母さん、こわいよ。こわい子がいるよ。
「や…、うそっ!」
突然、目の前の男がのけぞった。
盛大に目と口をあけて、やっぱりズレた視線で、おれの肩のあたりを見ている。というよりもはや凝視。
なんだ?
振り向いても当然そこには誰もいなくて。
床に着いた両手と尻でずりさがると「やばっ」聞こえた小さな声。
「すみません! なんでもありません!」
首筋まで真っ赤にした細っこい身体で正座して、床につきそうなほど頭を下げたやつが、次の瞬間にはバッタのように立ち上がっていた。
「忘れてくださいっ」
ぺこりと膝まで頭をさげて。
重たい防音ドアをベニヤ板かなにかのように豪快に押し開けたやつの背中が、ゆっくり閉まるドアの向こうに消えても思考停止。